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日本酒ビジネスの海外展開戦略を成功させるためのポイントとは?

日本酒メーカーへの海外展開支援

日本酒メーカーの海外展開支援は2013年頃から行われてきています。
現在、日本酒の輸出が好調な理由は、品質向上、高付加価値商品の開発、海外の市場調査などメーカーの努力のほかに「和食が食べたい、日本酒を飲みたい、飲んでみたい」という海外からの要望が大きいからだ、といえます。

実際に統計を見てみると、日本産酒類の輸出動向は、近年急速に伸びているのが見て取れます。

日本産酒類の輸出動向グラフ
日本産酒類の輸出動向

2013年に「和食(日本人の伝統的な食文化)」が世界遺産(ユネスコ無形文化遺産)登録ともなったことを発端とする和食ブーム、酒蔵ツーリズムやヴィジットジャパンの観光促進、國酒プロジェクトやクールジャパンの輸出促進など、国家レベルでの後押しが大きな力になっています。

成功事例として挙げられる獺祭

日本酒の海外展開で成功事例として挙げらるのは、山口県にある旭酒造の獺祭でしょう。日本国内でも人気があり、日経読者が選ぶ「勝負の日本酒」ランキング 1位に選ばれたりしています。同社の売上高は今期、過去最高となる150億円を超える見通し。うち半分程度は海外が占め、将来的にその割合は9割まで上昇する見込みとのこと。

2017年のデータですが、やまぐち経済月報2017.2では次のように記載されています。

・米国、中国、香港、台湾、シンガポール、英国、フランス等の22 ヶ国に輸出(スポット取引を含めると80 ヶ国程度)。
・売上高は約107億円(2016年9月決算)、輸出額は約11億円(同)で輸出比率は10%強。
・輸出額を仕向国別にみると、米国向けが全体の40%弱を占めて最多。次いで、中国が約25%、香港が約15%と、上位3ヶ国のシェアが約8割。

やまぐち経済月報2017.2

ここ5年程度は海外輸出額を積み上げ、輸出比率が10%強だったところから、50%程度に膨らんだ、ということでしょう。
決して獺祭も最初から順調だったわけではなく、4代目で現社長の桜井氏が2005年から「獺祭」の海外展開を担当してからの実績です。手掛けて10年でようやく目に見える実績が出始めたのです。

輸出先はどこか?

国別の輸出金額第1位は中国で 102.79 億円(昨対比 177.5%)。中国では日本酒は高級酒として若者や富裕層を中心に人気を集めており、EC ショップを通じて購入した自分好みの日本酒を外食時にレストランに持ち込み楽しむスタイルがみられます。

数量の第 1 位はアメリカで 8,826 キロリットル(昨対比 167.5%)でした。

海外では特にプレミアムな商品に人気があり、一本あたり2~3万円するようなものも普通です。高級酒の消費の伸びが目覚ましく、それを受けて日本国内でも日本酒が再注目されるという循環も起きていますね。酒類に関しては、イスラム圏はアルコールを飲む習慣がないので、ゼロとは言わないものの輸出量は多くないです。

出荷数量/出典:酒蔵プレス
出荷数量/出典:酒蔵プレス
出荷金額
出荷金額/出典:酒蔵プレス

近年注目したい傾向として、1L あたりの日本酒の輸出価格の上昇があります。10 年前(2011 年)の輸出金額は 625.9 円でしたが、2021 年には 1253.5 円と 2 倍上昇しており、国別に見ると香港では 3 倍の価格となっています。

1L あたりの輸出価格 ※単位:円・% / 年対比は 2021 年度との対比/出典:酒蔵プレス
1L あたりの輸出価格 ※単位:円・% / 年対比は 2021 年度との対比/出典:酒蔵プレス

これから日本酒メーカーが海外展開を希望する場合

公的機関の後押しやマッチングサイトなどをうまく利用する

先行する日本酒メーカーの努力が実ったことで、すでに日本酒の海外市場は形成されています。
日本酒メーカーの海外展開における最初のステップは、基本的には取引先・バイヤー探しです。
JETROや中小企業庁など公的機関の支援を受けることで、展示会の出展など比較的スムーズに海外展開の糸口はつかめます。
また、取引先・バイヤーとつながるためのマッチングサイトなどのサービスもありますのでうまく活用することも大切です。

海外展開戦略は持った方がいい

支援はそれなりに厚い日本酒の海外展開ですが、利用するに先立って自社の海外展開の戦略は立てることをお勧めします。なぜ海外に販路を求めるのか、どの程度のボリュームを見込む(期待する)のか、そのためにつぎ込むリソース(人員・予算)はどう手当てするか。

まさか社長、「海外進出担当者を1名任命した、あとはうまくやっておいて」なんてことはないですよね?

例えば、海外の展示会に出展してみたものの、商談のオファーが少ないとか条件が悪い、ということはよくあります。そんな場合でもその取引に進むべきか、次をあたるべきか。
展示会に出展するのも、マッチングサイトを利用するのも、英語版ホームページを作成するのも、その企画を社員に考えさせ、実行させるのも投資が必要なんです。

そんな時、よりどころとなるのは、自社の経営方針と同調した海外展開戦略。
海外展開で成功するまでのロードマップを描いて、関係者でイメージを共有し、協力を得ていくことが大切です。

参考サイト

Webサイト

資料

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